She Her Her Hers

Hot New Sounds !! 〜duo Live Report vol.36〜
“SPIRAL”digital EP release party @下北沢THREE
2018/10/2 tue.
text by 櫻井 央 (duo MUSIC EXCHANGE)
photo by 長塩禮子 (oto machi http://otomachi.net/)

広大なサウンドスケールに同棲する耽美な世界観に浸る

タカハシヒロヤス(Vo＆Gt,Syn)、松浦大樹(Dr＆Cho)、とまそん(Ba＆Cho)の三名を中心に活動するロックバンド“She Her Her Hers”。今夜は、ゲストに盟友“The Fin”を招き、9月に配信開始したばかりのEP“SPIRAL”のリリースパーティを開催した。会場は、下北沢の果てに佇むTHREE。満員御礼となったフロアの熱気をレポートする。

　メンバーの三名に加え、ギター、マニュピレーター、サックス、パーカッションの四名のサポートを迎えた今回のライブ、小さなステージに所狭しと並べられた機材、機材、機材…。そこからどんな音が奏でられるのか、開演前から胸が高まる。 幻想的なイントロから、おもむろにステージに登場する彼ら。1曲目は、今回リリースしたEPのタイトルトラックでもある“SPIRAL”。重厚感のあるシンセサイザーの音色に、美しいコーラスが彩っていく。続けて“Swallowtail”。個人的にも、今回のEPの中でとても印象的な楽曲。夜の街を夢遊するようなグッドメロディに体を揺らしていると、突如、頭の中に飛び込む変拍子のドラムビートに、気づくとKOされている。静と動のバランスがクールな“INITIALIZE“から、とまそん、松浦のMCで、今回のリリースパーティの主旨やThe Finを誘った経緯などが語られる。4曲目は少しテンポを上げて、POPな“Bloody Mary Girl”を演奏。官能的なサックスとギターが絡み合う“Floating city”へとなだれ込む。

　ここで、会場に来ていた CRCK/LCKSの小西遼が、なんと急遽ゲストで参戦。“Foggy Moon”に、サックスで艶やなかスパイスを加え、フロアを熱狂させた。終盤の前に、フロントマンのタカハシから今後の活動方針などが語られる。和気あいあいとしたアットホームな雰囲気のMCに、自然とフロアにも笑みがこぼれる。ラスト2曲、ダイナミックなバンドサウンドで聴かせる“because I know”、美しい終末観が一層センチメンタルな気分へと高揚させる“Episode 33”で本編を締めた。アンコールは、今回のゲストでもあり、盟友でもあるThe Finのメンバーを再度ステージに呼び、総勢10人以上（!?）のアーティストが、パーティを締めくくるべく“Vital”を披露し、大団円となった。

　ライブ活動もそこまで精力的ではない印象（現に今回が三年ぶりの企画）で、決して多作とはいえない“She Her Her Hers”だが、今回のライブは、着実に前を向いて動いていたことを示すのには、十分すぎるほどのパフォーマンスだったのではないだろうか。彼らの言う「どんなシーンでもグッとくる音楽」、という言い方がしっくりと腑に落ちるが、常に東京のロックシーンの先陣に居つつも、She Her Her Hers”らしくマイペースに質の高い音楽を作り続ける姿勢が、じわじわとあらゆるカルチャーシーンに浸透し始めているように思える。

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